日本の農業の問題
新規就農者といわれる人のうちどれだけの人がまともな経営者候補といえるだろうか。
実際には100人に一人ぐらいではないかなと思う。
日本の全産業でみると、生産年齢人口15−64歳は、8000万人をすでに割り込んでいて、これからどんどん減っていくようだ。
農業の世界ではその傾向が顕著。
50歳以下の新規就農者数は、毎年約2万人ペースで増加していて、そのうち半分の1万人程度が独立自営農業者。
一方、農業人口全体でみると、農業従事者数は毎年10万人程度の規模で減少している。
農業従事者率でみると、日本は4%弱。
アメリカやドイツは半分以下の2%以下
日本の農業人口数は今より半分になっても問題はない。
機会化も伴って、将来の日本の農業人口は100万人以下でも多すぎる。と思う。
だから、日本の農業者が減ることは問題ではない。
で、日本の農業の問題はなんであろうか。
非効率だと思う。どこが非効率か?
単位面積あたりの生産性だろうか?労働者数あたりか?
投下資本あたりの生産性だろうか?
販売面をまた別問題とすると、
日本の農業の問題は、資本効率が悪いことが一番の問題だと思う。
他国だけでなく、日本の他業界と比較すると費用対効果を考慮したマネジメント能力面が弱いと感じる。
何を省いて、どこに投資するのかという数値的な基準がない。なんとなく、二酸化炭素発生機を導入したら収量が増えるらしいから導入するとか、そんな感じだ。なぜそうなっているか。
現場の農業従事者や県の営農指導者がこだわるのは単位面積あたりの収量ばかり。いわゆる反収というやつだ。反収を上げるための投資の是非を判断する基準は?殆どないと言っていいだろう。なぜ、こんなことになってるのか。
問題は補助金制度。新規投資する際に補助金、規模拡大する際に補助金、新規就農者がハウスを建てる際に補助金。補助金、補助金、補助金。補助金を前提に成り立っているので、補助金をもらえるかどうかが一番の経営努力といってもいいすぎではない。投資回収期間とかまともに考えない。一生のうちで返せればいいという考え。設備更新の必要も考えない農家もいる。
畑も同じ作物をやってばかりいると、収穫逓減の法則どおり地力が低下していくし、ハウス栽培にしても老朽化していくので、収量を維持して経営を継続していくにはメンテナンスのコストも労力も必要。
必要なことをしないので、最初はいいが、徐々に経営状態が悪化していく農家も多い。
経営が右肩あがりにならないので、規模も拡大できない。トマト農家に関して言うと、経営規模が小さいほど、売上高に対する投資比率が著しく高い状態。
投資とは、施設栽培でいうと、ハウスの建設費であったり被覆資材などの生産設備の償却費、メンテナンスコストや更新費用。さらには、土耕栽培の場合は、生産を維持するためには土壌のメンテナンスも必要なので、堆肥や土壌消毒の費用。
それらを売上高に対してどれくらいの水準でコントロールするのか。施設栽培トマトの場合10%以内。
また、労務費は売上高に対して10−15%、燃料・動力費も10%前後。
設備投資、労務費、燃料動力費の合計を売上の3分の1に抑えていくのか。これが当面の自分の目標。土耕栽培の場合、設備投資に土のメンテナンスコストをいれることが重要。
https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/topics_170407a.pdf
さて、今日本では新規就農者を増やすために多額の補助金制度をいろんな場面で設けている。自分はほぼ補助金を受けない方向でやってるが、すべての補助金を受けて新規就農する人間もいる。新しいハウスを建てて独立就農する場合、就農前後の生活費補助、ハウス建設費補助だけでも、一人あたり2000万以上は補助金となる。農業者一人増やすのにどれだけ金使うのという感じで非常に違和感がある。
先程みた50歳以下の独立自営新規就農者1万人全員が2千万補助金うけたら、それだけで2千億yen。平成30年度の農林水産省予算のうち新規就農者を増やすための予算が175億円。助成金や補助金は必要な場面もあるだろうけれど、過度な助成金はモラルハザードを引き起こして、経営努力をおざなりにする従事者を無駄に生存させるばかりか、業界全体を弱くする。日本の農業は補助金中毒だ。
ハード面、ソフト面の両方で、機会化・自動化などの設備、知識や考え方の両方でイノベーションが必要だと思う日本の農業にとって、必要なのは補助金ではなく、フェアで自由な競争環境ではないかと思う。