雑感、あぶら


1998 年-1999 年初頭にかけて 1 バレル 10 ドル台前半で推移してきた原油価格が 1999 年 3 月以降急激な高騰を示した背景に、OPEC の政策がある。

 

OPEC はアジア経済危機による石油需要の低迷のさなか、1997 年 11 月の第 103 回総会(ジャカルタ会議)で約 10%の生産枠引き上げを決定した。その後、原油価格はバスケット価格で 1997 年 12 月の 1 バレル 16 ドル台からじりじりと下落し、1998 年 3 月には一時 12 ドルまで下落した。

 

1998年から1999年の油価暴落にOPECは強い危機感を抱き、1998年と1999年に合計430万バレル/日という大規模な協調減産を決定した。

 

 1998年3月、サウジアラビアベネズエラ、メキシコの3か国の石油相が会談し、OPECと非OPECが協調して、最大200万バレル/日減産することを呼びかける共同声明を発表した。これを受けOPECは、3月の第104回OPEC臨時総会で、1998年4月以降、合計124.5万バレル/日減産することを決定し、さらに6月の定例総会では、7月以降135.5万バレル/日減産目標を追加した合計260万バレル/日の減産を行うことを決定した。非OPECの国も、相次いで減産ないし輸出削減を約束した。しかし、アジア経済危機の拡大による世界石油需要の低迷などから、原油価格は低迷し、1999年2月には、1986年の価格暴落以降12年ぶりの安値をつけた。これに対し、産油国は再び危機感を強め、1999年3月、OPECと非OPEC産油国で合計210万バレル/日という大幅な追加減産に合意し、産油国はおおむね合意に則った減産を実行し、原油価格は上昇基調に転じた。

 

 

1998年1月から1999年4月にかけて、原油安による不採算により、北米の稼働リグ数は半減した。

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2016年3月4日発表の稼働リグ数は、489基と1年前から50%以上の減少。

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1998年から1999年末にかけて、アメリカの原油生産量は日量640万バレルから600万バレル以下へと低下した。

とりわけ、1999年2月前半には日量47万バレルの減少があり、ハリケーンなどによる緊急停止を除けば特異な減少点だった。

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その後2000年代前半にかけて数度のハリケーンによる一時的減をはさみながら日量600万バレルから500万バレル割れまで減少していく。

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1998年から1999年の2年間でOPECは3度の減産を決定した。

OPEC,非OPEC諸国の減産量は合計,日量519万バレルに上り、当時の世界の原油供給量7420万バレルの7%に達した。

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足元の世界の原油供給量は日量9700万バレル

2013年1Q:90.52mb/d →20154Q: 97.07mb/d 

+655mb/d

一方需要は

2013年1Q:90.74mb/d →20154Q: 94.83mb/d

+409mb/d

供給の伸びの方が2.46mb/d多い。

OPEC供給量は

2013年1Q:31.22mb/d →20154Q: 32.33mb/d

+1.11mb/dと。

その増加分も2015年以降のサウジアラビアによる意図的増加で、それまでは非OPECの増加分をサウジアラビアが調整してきたといってよい。

 

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OPECでの生産量の減少傾向を見ながら、サウジアラビアなどのOPEC減産が決定されることになると思う。

世界全体の稼働リグ数は、2014年1月に3700基あったものが足元1800基まで減少してきている。中東は変わらない。遅かれ早かれ、非OPEC諸国での生産量減少につながり、それを見て減産に動くものと思う。どれくらいの量かはわからないが、足元200万バレル供給超で、世界の供給量の3分の2が非OPECで、直近2年の供給増加の8割が非OPECであることから、非OPECで100-150万バレルは減少を見る必要があるのではないかと思う。とりわけ北米地域のシェールオイル由来の原油生産量かと。

 

 

 

 

こっからは、単なる推測だけど、今後アメリカの原油生産量は急減する可能性が高い。

というのも稼働リグ数がここ1年以上減少し続けても生産量は増加横這いであったのは、生産性の低いリグ=いらないリグを減らした(2014年4Qから2015年1Q)、その後リグの減少が止まった期間があって(2015年2Q-3Q)、2015年4Qの最後あたりからまた減りだした。今後減っていくリグはそれなりの生産性の高いリグも含まれているので、個々からのリグの減少は生産減にそのままつながるのではと。

 

アメリカの国内原油生産量は、3月第1週発表時点で日量907万バレルと、最も大方昨年6月の960万バレルと比べると50万バレル減少している。6週連続の減少は、1983年の統計開始以降では2015年9月第2週とならぶタイ記録。あのときは909万バレルまで減少したが、その後生産量が920万バレルまで持ち直したこともあり、サウジアラビアは減産姿勢をみせず12月4日のOPEC総会でも現状維持となった。

3月第1週観測の生産量、つまり来週水曜日のDOE原油統計で生産量が7週連続の減少となり900万バレルを割り込むか、またそれが大幅な減少になるかどうかは非常に注目されるところ。

3月20─4月1日の間にはサウジアラビアとロシアを中心とする増産凍結の会合がなされるとされており、その間にアメリカの生産量がどうなっていくかというのは会合の決定内容を大きく左右する要因となりうると思う。

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直近2年で世界生産量が日量600万バレル超増えたうち、250万バレル以上が北米からもたらされたというのは、ちょっといいとこどりしすぎのフリーライダーな気もするので、需要の伸びに合わせるとすると、やはり150万バレル程度減らし、2013年後半あたりの水準にまで最終的には減少してほしい感じか。グロスの生産量にして日量800

万バレル前半あたりといったところがほしい感じか。

なお、米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)は、米国の今年の原油生産量は日量870万バレル、17年は日量850万バレル程度と見通した。

1999年2月第2週に31万バレル減、3週に15万バレル減のような明確な減少が見られれば、サウジアラビア・ロシアも動ク要因となると思うが。

 

原油在庫発表は在庫量より生産量に注目である。

 

[参考]

http://eneken.ieej.or.jp/data/pdf/787.pdf