農業、メモ

日本の農業をデータで見ると(図-1)、農業総産出額は1980年代半ばから低減傾向にあります。また生産農業に従事する人の所得は、全体でわずか2.9兆円ほどと、非常に低いです。

 農業就業人口は、1970年に1025万人だったのが、2014年には約227万人。さらにこの227万人のうち半数以上は、65歳以上の年金受給者です。高齢化が進むことで耕作放棄地も拡大し、その面積は約40万haにも及びます。

 このように農家は耕作地を持て余しているものの、政府が大規模農場を作るために農地集約を試みても、2014年は目標とする農地の10分の1も集まりませんでした。

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その理由として考えられるのが、農業に関わる利権問題です。
日本の農家は兼業農家、つまり農業収入以外の収入がある人が大半です。とりわけコメ農家は兼業率が高く、収入の8割は農業収入以外で得ています。前述したとおり就農者の半数以上が65歳以上ですから、年金収入が農業収入を上回る人が多いわけです。


 土地を持て余しながらでも細々と農業を続けるのは、税金など各種優遇、農業補助金など、手厚い保護があるからです。だから農業を辞めることの不利益が大変大きい。私も農業をやっていますが、ある地域で土地を売ってもらおうとしたところ、3000万円と言われた。ところが、貸すとなれば5万円(年間)だと言う。つまり農地を手放すことで発生する損が、3000万円に値するということです。

 

 


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農産物輸出額世界2位を誇るオランダですが、実は国土面積は九州くらいしかありません。したがって農地も限られており、1人当たり農地面積は9.4haです。
日本は1.8haで、世界でもまれに見る小ささです。1人当たり生産額はオランダが5.7万ドル、日本が3.5万ドル。しかし、10ha当たり生産金額では、オランダは603ドル/10haと、どの国よりも高いです。

 日本は1907ドル/10haと、単純に数字で見れば先進国の中でも断然高いのですが、これは補助金の大きさですから、実力ではありません。

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「1週間たつと、日本人独特の商品に対するこだわりを意識するようになりました。彼らはその部分のプライオリティーが低い。彼らがプライオリティーをおいているのは、一定の品質で生産性が高いこと、何より人件費を削ることです。これに対し、顧客をどう満足させるかが日本の農業の形です。生産性を高めた状態でどう品質を維持するかを考えながら作業しました」

「ぼくらは二酸化炭素(CO2)や肥料のコスト管理を2週間や1カ月の単位で考えていましたが、彼らは1㎡単位で毎日のように調整できる細分化されたコントロールの技術を持っているんです。そしてその一つ一つに疑問を持ち、お互い議論していく」

 「例えば、どういうタイミングでハウスの窓を開けるべきか。開ければCO2が減ってしまうが、ではどういうタイミングでCO2を発生させるか。植物の健康をどう維持するか。ハウス内が暑くなりすぎると、ワーカーが働きにくくなるが、その問題にどう対処するか。そういうことまで細かく話をするんです」

マーケティングももっと細かいやり方が必要だと思っていました。父親は農協の生産組合に入っていて、決められた量を決められた販売先に納めていました。ぼくはその危うさを感じていたので、独自にスーパーと契約し、インターネットでも売るなど、直売を始めました。販売する力をつけるためにも、特殊な栽培方法をする必要があったんです」

 

スマート農業の推進による日本農業の再興

我が国の農業競争力を強化するためには、大規模化による効率化、低コスト化は、非常に重要である。しかし、我が国の国土は南北に長く、多様な気候・文化を有しており、その土地の気候に応じた栽培方法、農作物、消費者ニーズがあるため、オランダのように選択と集中を図ることは難しい。また、島国であるため、オランダのような大規模な輸出先を確保することも困難である。

今後、我が国の農業を持続的なものとし、強い農業を実現するためには、国際的な評価を得た我が国の食文化をグローバル市場における競争力とするのが有効であると考えられる。そのためには、全国一律にオランダを模倣し安易に大規模化するのではなく、地域の強み・特色を踏まえ、地域性を考慮した農作物の多様性を維持することが重要である。作業の効率化、低コスト化の技術、農業経営ノウハウ等に関してはオランダから学んだ上で、オランダとは異なる強い農業を目指すことが重要であると思われる。

現在のオランダ型スマート農業化を見据えた生産振興策だけでは、農作物の多様性を維持することは難しいため、今後は、大規模農家だけではなく、小規模農家のスマート農業化を支援する取組も必要である。日本においてスマート農業を推進させ、農業を再興させるためには、小規模農家の価値・役割を見直し、小規模生産者に力を与えるための仕組みづくりが求められているのではないだろうか。

今後、我が国において、農作物の多様性を維持しつつ、最適なスマート農業化が図られることより、高品質で付加価値の高い農産物が生産・加工され、地方の基幹産業である農業の再興や地域活性化につながることが期待される。

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オランダの単位面積当たりの収量が極端に高い理由
オランダは確かに最先端の農業技術を保有し、単位面積当たりの収量はとんでもなく高い。トマトなどは同じ面積で日本の数倍は穫れる。日本の1000平方メートルあたりのトマトの収穫量は品種にもよるがよく作っている人で20トン。対して、オランダは1000平方メートルあたり70トン以上穫る農家がざらにいる。その収量を支えているのは産地および農場施設の大規模化・クラスター化による熱やCO2などの有効利用。そして何より作付品目の少なさだ。つまり、極端に限られた種類の農作物を大規模な施設で大量生産している。栽培品目の選択と集中は研究開発、施設建設、栽培、輸送そして販売に至るまでのバリューチェーンのすべてにおいて、コスト低減効果を生む。

 

なぜオランダと日本の作型にそれほどの違いが生まれるのか。やはり地理的な条件の違いが大きい。オランダは葉物野菜のような日持ちのしない作物を簡単にフランスやドイツなどの土地利用型の農業大国から陸続きで輸入できる。少し足を延ばせばスペインもある。したがって、作る品種を極端に絞っても、なんの問題もない。極端な話、自国内の生産を全部輸出向けにすることだって可能なのだ。
もし日本で、作る野菜を5つに絞ったらどうなるか。その他の95を全部、島の外から運んでこなくてはならない。