MAGIC DIAMOND

【ファクターリターン】
三井住友銀行とラッセル野村のホームページとレポートを元に、日本株のファクターリターンについて少し書いてみます。

三井住友銀行のホームページから
http://www.smtb.jp/business/pension/information/center/operation/quants/06.html

株式市場を計量的に分析する手法として、ファクター・リターン分析が一般に用いられております。
これは、株価変動に影響を与えると考えられるファンダメンタル指標や市場指標を用いて、各指標が一定期間における銘柄間のリターン格差をどの程度説明しているかを分析するものです。

 

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「最近、バリューが効いてるね。」とかいうあれですね。
日本ではRUSSELがスタイル・インデックスを発表してて他はあまり知りません。

最近で言えば、Large/Smallのスプレッドリターンのボラティリティが激しいのが気になります。

為替、JUNK債、PKO(日銀買い)の影響が大きいのではと思ってます。どう思いますか?

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住友信託銀行が過去に行った「スタイル・・インデックス ~ リターンの特性分析」
http://www.smtb.jp/business/pension/information/center/operation/pdf/07_04_35_08.pdf
の結果では、

【バリュー-グロース (V-G) のスプレッド・リターン 】
1996 年1 月以降1999年はグロース優位
2000 年1 月~2003 年4 月はバリュー優位


※新系列は業種間バイアスを排除したもの
【Value/Growth 累積スプレッドリターン】
ITバブルの影響が大きく、1997年後半と1999年後半の2回、大きなグロース優位の時期が見受けられます。そして、崩壊ともに2000年以降の揺り戻し。なんとなくイメージできます。

 

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【大型-小型 (L-S) のスプレッド・リターン】
2000 年1 月~2003 年4 月は小型優位

 

※新系列は業種間バイアスを排除したもの
【Large/Small 累積スプレッドリターン】
前述のGrowth優位期間と重なる期間において、Largeが優位であるように見えます。
これは興味深いです。

 

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上記のように、株式市場の計量分析を行う場合、Value/Growth,Large/Smallに業種要因を加えて分析するのがまずは基本にになるかと思います。


ここで住友信託のレポートからφ(..)メモメモ

これら細分化された指数には業種構成比が一切考慮されていないため、
スタイルやサイズ別のリターン特性には業種効果が大きく作用しているものと想定されます。
・・・日本のスタイル・インデックスと同様に米国のケースでも、トータルリターンの90%以上が業種インデックスのパフォーマンスによって説明されると述べられています・・・・

Value/Growth,Large/Smallにベットしてるつもりが、特定の業種に気が付かないうちに不必要なリスクを取らないように気をつけたいと思います。
逆に業種間リターンにベットしてるつもりが、必要以上にV/G,L/Sのリスクをとってしまうことも。

 

Definition:

【Factor Return】
The return attributable to a particular common factor. We decompose asset returns into common factor components, based on the asset's exposures to common factors times the factor returns, and a specific return.

Factor Model
A way of decomposing the forces that influence a security's rate of return into common and firm-specific influences.

Factor Portfolio
A well-diversified portfolio constructed to have a beta of 1.0 on one factor and a beta of zero on any other factors.

 

S&P,RUSSEL2000】

アメリカの代表的な指標では、S&P500,S&P600,RUSSEL2000,NASDAQ100の4つをよく見ます。

Large Cap: S&P500

Small Cap: S&P600

Small Cap: Russel2000

Non-Financial, Tech: Nasdaq100

S&P500,S&P600,Russel2000にはそれぞれ、Growth/Value指数がありトラックするETFもあります

 

騰落レシオなど市場全体を見る場合は、NYSE CompositeNasdaq Compositeを使ってます。

 

ETFを列挙すると以下になります。(最後尾にMkt Cap)
SPDR S&P 500 ETF Trust(NYSEARCA:SPY):$190.2B
SPDR S&P 500 Value ETF(NYSEARCA:SPYV):$0.24B
SPDR S&P 500 Growth ETF(NYSEARCA:SPYG):$0.52B

SPDR S&P 600 Small Cap ETF(NYSEARCA:SLY):$0.34B
SPDR S&P 600 Small Cap Value ETF(NYSEARCA:SLYV):$0.33B
SPDR S&P 600 Small Cap Growth ETF(NYSEARCA:SLYG):$0.40B

iShares Russell 2000 Index (ETF)(NYSEARCA:IWM):$29.3B
iShares Russell 2000 Value Index (ETF)(NYSEARCA:IWN):$6.1B
iShares Russell 2000 Growth Index (ETF)(NYSEARCA:IWO):$6.5B

PowerShares QQQ Trust, Series 1 (ETF)(NASDAQ:QQQ):$41.5B

この他、
バンガード®・米国バリューETF(VTV)」と「バンガード・米国グロースETF(VUG)」がそこそこ流動性があります。MSCI US Prime Market 750というLargeCapのユニバースからValue/Growthでわけたものです。
Vanguard Value ETF(NYSEARCA:VTV):$17.4B
Vanguard Growth ETF(NYSEARCA:VUG):$17.3B

ETFはこの他にも沢山あるので、ETFに関しては機会を改めて別エントリーにまとめたいと思います。

 

 

【Growth/Value Chart】

 ファクターリターンのトレンドを簡易的に見るために、各スタイル・インデックス連動ETFのレシオをとってチャートで見てみたいと思います。

 

1) Russell 2000 Growth/Russell 2000 Value

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2013年は基本Growth優位で、10−12月の調整。2014年の2月後半を境に、5月13日までSmall Cap Growthが大きく売られるなかでValue優位となりました。 そして、今年10月前半に大きめの調整。これは、エボラというよりJUNK債市場が売られたことによるものではないかと思います。基本Russel2000が調整する局面では、Growth<Valueとなるようです。なんとなく周期があるように見えます。代替2ヶ月から2ヶ月半くらいGrowth優位が続くように見えます。

2013/05/09-2013/07/12

2013/07/24-2013/10/03

2013/12/12-2014/02/26

2014/05/09-2014/07/02

2014/07/18-2014/09/30

2014/10/15- 

 

2) S&P600 Growth/S&P600 Value

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 同じSmall Capですが、結構絵柄が違います。3月4月の大幅下落と10月の下落ここは一緒です。ユニバースの違いでしょうか。また時間があるときに調べたいと思います。

 

3) S&P400 Growth/S&P400 Value

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Mid-CapであるS&P400で見てみました。こちらはさらに絵柄が違います。ただ、3,4月と10月の調整はこちらでも確認できます。

 

4)長めに上記3つ(Russel2000,S&P600,S&P400) で比較

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2011年9月にトップアウト、その後は 

 2013年ぐらいまではダラダラと似たような動きをしてましたが、2013年以降は、Russel2000のトレンドが一番はっきりしています。

 

5) S&P500 Growth/S&P500 Value

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Large Capではより鮮明にGrowth/Valueのトレンドがでているように見えます。

今年3月の調整も一致しています。一方で、10月の調整はそれほどでもなく、2013年5月後半の調整が大きくでています。では、もう少し期間を延ばしてみてみます。

 

 

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もう少し長めに見ると、。2月後半の高値は抜けてきており、2011年&2012年の高値まできています。チャート的にはブレイクするか否かという感じに見えます。節目にあるのでしょうか。

 

6) Vanguard Growth/Vanguard Value 

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S&P500とは絵柄が違うように見えます。 トレンドがわかりづらいく、ただ、2013年5,6月と今年3,4月のトレンドははっきり共通しています。こちらも、もう少し長めに見てみます。

 

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 長めに見ると、S&P500と結構似た絵柄になっています。節目っぽいです。上抜けるのでしょうか。

 

以上、Growth/Valueに関しては、違いはあるものの ある程度共通するポイントが3つあったように思います。

1. 2011年9月に高値をつけて調整した。

2. 2014年2月後半に高値をつけて、3,4月と大きめの調整があった。

3. 現在そこそこの高値圏にある。

1と2の調整に関して、何がトリガーになったかもしくは先行する指標はないか調べてますが、今ひとつ決定的なものはありません。その中でも一つ気になったチャート。

 

MSCI Emerging vs S&P500 Growth/Value】 

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青のEmergingが売られる一方で、赤のS&P500Growth/Valueが上昇(Growth優位のトレンド)し、その後逆転するという一連のdivergence/convergenceの形が菱型になってみえます。

2011年以降で菱型が3つほど。これをマジックダイヤモンドと名づけましょう。

何らからのドライビングファクターがあって(例えば成長市場へのアロケーション変更など)、マジックダイヤモンドが発生しているのか、もしくは偶然なのか。それはわかりません。ただ、少し気になります。

 

Large/Smallについても書くつもりでしたが、長くなりすぎるので止めときます。

時間があれば追記しておきます。

 

以上、ファクターリターンの話でした。

 

<2014/12/22. 追記>

ラッセル野村とみずほの資料から

 

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http://www.russell.com/JP/PDF/rulebooks/RN_rule201206.pdf

 

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http://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/today/rt141217.pdf

 

 

 

【関連書籍】
Daniel, K. and S. Titman (1997),
“Evidence on the Characteristics of CrossSectional Variation in Stock Returns,”
Journal of Finance, Vol. 52, No. 1.

Fama, E. F. and K. R. French (1993),
“Common risk factor in the returns onstocks and bonds,” Journal of Financial Economics,
Vol. 33, No. 1.

小林孝雄 (1997)、
「スタイル・マネジメントの理論的基礎」、
証券アナリストジャーナル』5 月号。

福嶋和子 (2002)、「株式投資スタイル運用の現状とスタイルベンチマーク」、
証券アナリストジャーナル』8 月号。

山口勝業、小松原宰明 (2003)、
「スタイルインデックスのスタイル分析:業種要因とスタイル固有要因の日米比較」、
『2003年度 日本ファイナンス学会第 11 回大会予稿集』。