植物の水分欠乏時の成長促進機構

東大と理研、植物の水分欠乏時の成長促進機構を発見 :日本経済新聞

植物の水分欠乏時の成長促進機構の発見 -作物の乾燥や塩ストレス時の成長や収穫を向上させる技術開発への貢献に期待-

 

http://release.nikkei.co.jp/attach_file/0431762_01.pdf

 


植物の水分欠乏時の成長促進機構の発見
発表のポイント
◆植物が水分欠乏ストレス時に働かせる成長促進機構を発見し、その制御機構を分子レベルで明らかにしました。

◆サブクラス I SnRK2タンパク質キナーゼ(注1)とその下流で働く因子が、水分欠乏ストレス環境下において、不要なmRNAの分解を活性化して植物の成長促進に役割を果たしていることを明らかにしました。

◆作物の干ばつや塩害などの水分欠乏ストレス時の成長や収量を向上させる技術開発への貢献が期待されます。

発表概要
植物は刻々と変化する生育環境に適応して成長するため、様々な遺伝子の発現を絶えず調節しています。干ばつや塩害等による水分欠乏ストレスにさらされた植物では、植物ホルモンであるアブシシン酸(ABA、注2)が蓄積し、ABA活性化型のサブクラス III SnRK2タンパク質キナーゼを介してストレス耐性遺伝子群の発現が誘導され、耐性が獲得されることが知られています。一方、水分欠乏ストレスの初期にABAを介さずに活性化するサブクラス I SnRK2タンパク質キナーゼが存在していますが、それらがどのような役割を担っているのかは不明なままでした。 
 今回、東京大学の篠崎和子教授らと理化学研究所の共同研究グループは、サブクラス I SnRK2タンパク質キナーゼとその下流で働くmRNAの脱キャップ複合体(注3)の構成因子VARICOSE(VCS)が、水分欠乏ストレス環境下において不要なmRNAの分解を活性化していることを明らかにしました。サブクラス I SnRK2タンパク質キナーゼが欠損した変異体ではストレス時特異的に植物の成長が阻害されることから、このmRNA分解機構はストレス時の植物の成長を促進する働きを示すことが明らかになりました。本研究の成果は、植物の水分欠乏ストレス時の成長や収穫量を向上させる新たなアプローチの提案につながると期待されます。

発表内容
植物の水不足(水分欠乏)は、干ばつ地域や塩害土壌等の不良生育環境下で引き起こされるのみならず、日照りが長く続いた時や海水を被るなどの様々な生育環境下で引き起こされます。植物にとって水は光合成に必要であり種々の細胞活動の維持に必須であるため、水分欠乏ストレスは植物の生存を脅かす最も危険な環境ストレスの一つです。水分欠乏ストレスにさらされた植物細胞では、植物ホルモンであるABAが蓄積し、ストレス耐性能を付与する遺伝子群の転写が誘導されます。共同研究グループはこれまでに、ABAによって活性化するサブクラス III  SnRK2タンパク質キナーゼとその下流で機能するAREB転写因子が、ABAを介した転写誘導において重要な役割を果たすことを明らかにしていました。SnRK2タンパク質キナーゼは高等植物では複数種存在しており、それぞれのSnRK2ファミリーが異なる機能を有していると考えられています。進化的に高等な種子植物では、水分欠乏ストレス時にABAを介さずに活性化するサブクラス I SnRK2タンパク質キナーゼが見出されていますが、それらがどのような分子的・生理的機能を果たしているのかは不明なままでした。

 

今回、共同研究グループは、共免疫沈降法と質量分析計を組み合わせた手法により、サブクラス I SnRK2タンパク質キナーゼの相互作用因子の同定を試みました。その結果、mRNAの5’キャップ構造の除去に関与するmRNA脱キャップ複合体の構成因子であるVARICOSE (VCS) がサブクラス I SnRK2の新規な相互作用因子として同定されました。VCSはmRNAの脱キャップおよびmRNA分解を制御しており、水分欠乏ストレス時に複数箇所でリン酸化修飾を受けることが明らかにされています。しかし、VCSのリン酸化を制御するタンパク質キナーゼおよびそのリン酸化の生理的な意義は不明なままでした。共同研究グループは、サブクラス I SnRK2が水分欠乏ストレスに応答してVCSをリン酸化する主要なタンパク質キナーゼであることを見出しました。この結果から、サブクラス I SnRK2は水分欠乏ストレス時にVCSのリン酸化を介して何らかの分子的・生理的応答を制御していることが予測されました。

さらに共同研究グループは、サブクラス I SnRK2が水分欠乏ストレス時にVCSのリン酸化を介してmRNA分解を制御しmRNA蓄積量を調節している可能性を検討しました。まず、サブクラス I SnRK2遺伝子を欠損したsrk2abgh変異体とVCS<遺伝子の発現量を低下させたVCSノックダウン植物体(注4)を用いてトランスクリプトーム解析(注5)をおこないました。すると、srk2abgh変異体およびVCSノックダウン植物体において、水分欠乏ストレス時に発現量が減少する遺伝子群が野生型株と比較して高レベルで発現していることがわかりました。そこで、これらの植物体においてmRNA分解がどのように影響を受けているのかを解析した結果、水分欠乏ストレス時に発現量が減少する遺伝子群のmRNAの分解が阻害されていることが見出されました。以上より、水分欠乏ストレス時にサブクラス I SnRK2がVCSのリン酸化を介して不要なmRNAの分解を活性化していることが明らかになりました。さらに、srk2abgh変異体およびVCSノックダウン植物体はストレスのない正常な状態で生育させると野生株と同様に生育するのに対して、水分欠乏環境下で生育させると野生型株よりも顕著な生育阻害を示しました(図1)。これらの結果から、サブクラス I SnRK2とVCSによるmRNA分解制御は、不要なmRNAの分解を促進することで植物の成長を促進する役割を果たしていると考えられました。

以上より、ABA活性化型のサブクラス III SnRK2はストレスによる転写誘導を活性化するのに対して、サブクラス I SnRK2はVCSのリン酸化を介して、水分欠乏ストレス時に不要なmRNAの分解を活性化することで植物の成長を促進することが明らかになりました(図2)。サブクラス I SnRK2およびVCS種子植物で高度に保存されていることから、本研究で明らかとなったサブクラス I SnRK2とその下流で働くVCSを介したmRNAの分解調節機構は、イネやダイズといった作物でも保存されていると考えられます。そのため、サブクラス I SnRK2やVCSをターゲットにした分子育種やこれらの活性を調節する薬剤の開発等により、干ばつ等による水分欠乏ストレス時の成長や収量を向上させた作物の開発への応用が期待されます。

 

Lake Street Dive

ラジオを聞くことが多い。ハウス内で作業してるときは、ずっとラジオ聴いてるし、家に帰ってもテレビ見ないけど、ラジオ聴いてくつろいだり作業してる。

トマトと会話してるときに、流れてきたラジオで、Lake Street Dive というグループの曲がいいなと思った。ジャクソン5のカバー

 

youtu.be

Hazard Analysis Critical Control Point

HACCP(ハサップ)とは:日本 | 貿易・投資相談Q&A - 国・地域別に見る - ジェトロ

 

HACCPとは
Hazard Analysis Critical Control Pointの略称です。
ハサップまたはハセップとも呼ばれます。

従来の食品の安全性を確保する手段は、製造する環境を清潔にすれば安全な食品が製造できるとの考えのもとで製造環境の整備、衛生の確保に重点が置かれていました。製造された食品の安全性の確認は、主に最終製品の抜取り検査、微生物の培養検査等により行われてきましたが、抽出サンプルのみでは検査に漏れた不良品が食中毒などを引き起こす危険性を排除できません。

それに対し、HACCPでは、原料の入荷、調合・充填など製造加工・加熱殺菌(微生物要因)、包装・箱詰め工程における異物混入にいたる食品製造の全工程であらゆる危険を予測・分析(Hazard Analysis:HA)し、その危険を防止(予防、消滅あるいは許容レベル以下に減少)するための重要管理ポイント(Critical Control Point:CCP)を特定し、そのポイントを継続的に監視・記録(モニタリング)し、不良を未然に防ぐ、あるいは異常が認められたら直ちに対策を講じ、解決することにより不良製品の出荷を未然に防ぐ総合管理方式です。

 

ハンバーグを例に具体的に説明します。
ハンバーグを焼く際、ハンバーグの中心温度を何度に上げ、何分過熱すれば安全なレベルになるかを分析します。分析に基づいて決定した方法で調理し、その過程を記録します。これにより、従来の抜き取り検査では得られない全品の安全性が確保できます。また、記録により安全性を証明できます。

背景
HACCPは1960年代に米国で宇宙食の安全性を確保する目的で開発された食品衛生管理手法です。
国連食糧農業機関(FAO)および世界保健機構(WHO)の合同機関である食品規格委員会(コーデックス(Codex)委員会)で制定され、各国にその採用が推奨されています。
日本でも1995年に食品衛生法の一部を改正し、1996年5月に「改正総合衛生管理製造過程の承認制度(HACCP法)」として施行されました。
1998年には食品会社のHACCPの導入を資金面から援助するため、厚生労働省農林水産省が共同で「HACCP支援法」を制定しました。支援法は5年間の時限法として制定されましたが、食の安全に対する関心の高まりを受け、2013年12月から2023年12月までの10年間の延長が決まっています。
なお、HACCPは欧米では義務化されていますが、日本での導入は企業の自主性に委ねられています。

1. 以下のケースについてはHACCP認定施設で製造された食品以外、輸出できません。
EU向け水産品
米国向け水産食品
米国・カナダ・香港・EU・シンガポール向け食肉

対EU、対米国向けの水産食品の取り扱い要領については、文末の厚生労働省のウェブサイトを参照ください。

2. 食品については多くの国で何らかの輸入制限や許認可制度を課しています。例えば「製造基準適合証明書(Good Manufacture Practice:GMP)」の提出が求められた場合、HACCP認定書に在外公館の翻訳証明を付したもので代用できます。HACCPを採用していない場合、製造データや分析証明の提出などの点で、許認可の取得は極めて困難です。

3. 欧米では食品製造業はHACCPが義務化されています。アジアでも同様の動きが広がっています。海外で食品製造業に参入する際には注意してください。

 

 

 

 

 

 

2017年

やっとというか、ようやく、

自分の中でも色々なこと整理できてフンギリがついた。

もやもやしながら、葛藤もあった時期、

とりせあず走り続けて、大小、乗り越える壁を作って挑戦し続けて、気をまぎらわせたじき。

ただただ、呼吸して、ご飯食べてた時期。

もあったけど。

今、今日は結構ワクワクしてて、目指す目標といまやんなきゃだめなこと、課題も明確になりつつある。山登りでいえばたぶん一合目くらい。登れない山じゃない。他の人みれば低いのかもしれんけど、それは関係ない。

10年ぶりくらいかな、こういう気分は。

がんばるぞー

 

 

カゴメ

 

 

 

最近、スーパーの店頭にカゴメの生鮮トマトが並ぶようになった。ジュースやケチャップといった加工食品とは勝手が違う。それでも自社栽培に乗り出した「トマト野郎」の目論見とは――。
10年以上の赤字に耐え続けた理由とは

枝を伸ばしたトマトの株が、見渡す限りに連なっている。濃い緑の葉、無数の赤い実と青みがかった実とが、ガラス窓から入り込む陽光に照らされ、それぞれに輝いていた。株の数は約30万本。平均台のような何列もの畝が、約200メートルの長さで並ぶ。その光景からは、「植物工場」という言葉を確かに想起させられた。

カゴメの子会社として生食用トマトを生産している「いわき小名浜菜園」は、福島県いわき市の工業地区にある。関東に向かう基幹道路・常磐バイパス沿いにあるため、周囲には物流倉庫が建ち並ぶ。そのエリアで広さ10ヘクタール、高さ6メートルのガラスハウスは一際異彩を放っていた。

エアカーテンを通り、靴底を消毒して中に入ると、温室内は明るく、すこし暑い。スピーカーで音楽が流されるなか、女性を中心とした約200名の従業員が手際よく作業を行っていた。

小名浜菜園の永田智靖代表が言った。

「エリアは4区画に分かれ、それぞれに班長がいます。その他にグロワーと呼ばれる社員2名が病害虫の発生や発育状況を常に確認し、日々の作業の方針を決める体制をとっています」

いわき小名浜菜園。(1)ガラス温室はオランダ製。10haに約25万本のトマトが植えられている。(2)従業員数は約200人。(3)いわき小名浜菜園の永田智靖代表取締役。(4)袋ごとに手で重さを量る。

カゴメがこうした大型施設を使ったトマトの生産を始めたのは1999年、茨城県小美玉市美野里菜園」が最初だ。小名浜菜園の操業開始は05年で、全国11カ所ある大型施設のなかでも、最大の規模となっている。生産量は年間3500トン。1つの温室では10カ月連続で収穫ができ、4つある温室の入植時期をずらすことで、1年を通じて生産を続けることができる。

政府の後押しをうけて、企業の農業参入が増えるなかで、「植物工場」への注目も高まっている。こうした小名浜菜園に代表されるカゴメの大型施設は多くの企業が視察に訪れる場所になっている。

ただ、ここで付け加えておきたいのは、カゴメの生鮮事業が参入から10年以上ずっと赤字だったという事実だ。2012年度から黒字化し、13年度には過去最高となる97億円を売り上げたが、道のりは険しかった。

カゴメの菜園は、農業先進国のオランダの施設を導入したものだ。室内の温度、ガラス窓の開度といった環境は全てコンピュータによって一定に保たれ、日射量に応じて水の量や肥料、光合成に必要な二酸化炭素の濃度も自動的に調整される。最新のテクノロジーにより、「工場」のように安定した収穫が見込める、という触れ込みだった。しかし計画通りにはいかなかった。

「天候が異なる日本でこの施設を使いこなすためには、トマトとしっかり会話のできる人材を育て、職員の効率的なマネジメントを確立させる必要がありました。実際にここでまともに生産ができるようになるまでに5年かかった。それまではトライ&エラーの連続だったんですよ」(永田代表)

では、カゴメはなぜそうまでして生鮮事業にこだわってきたのだろうか。寺田直行社長に聞くと、「その間に事業の撤退を望む声は社内に全く聞かれなかった」という。

カゴメという会社はそもそも農家から始まった企業。特にトマトについては、うちがやらなくてどこがやる、という思いを常に持ち続けてきたんです」

国産ブランドを培う「契約栽培」の伝統

かつて「トマト翁」と呼ばれた男がいた。蟹江一太郎――カゴメの創業者である。1875年、蟹江一太郎は愛知県知多郡荒尾村(現東海市荒尾町)の農家に生まれた。彼がトマトの栽培を始めるのは1899年。兵役を終えるとき、上官にかけられた次のような言葉がきっかけだったという。

「これからの農業は、これまでのように米麦をつくることのみ専念していたのでは、いかに額に汗して働いても発展や向上は期し難い。だから、たとえば西洋野菜のような将来性のある作物をてがけるなどの工夫をして、農業の在り方を今日の時代に即したものに変えてゆかねばならない」(社史より)

彼はこの言葉に促され、キャベツやレタス、タマネギ、ニンジンといった西洋野菜の栽培を手掛け始めたのである。

だが、その中でトマトを好んで口にする日本人は皆無だった。もともとは江戸時代に観賞用として持ち込まれた植物であり、当時の品種は匂いもずっときつかった。人は青臭い匂いの漂うトマト畑の前を、鼻をつまんで通り過ぎる程だったという。

蟹江一太郎の創業者たる所以は、大量の在庫を見ても栽培を諦めず、ホテルなどの料理人に学んでトマトの加工を試みたところにある。自宅の納屋でトマトを刻み、熱を加える。すると次第に青臭さは消え、旨味成分が引き立てられた調味料やソースとなった。国内でトップシェアをもつ「トマトケチャップ」の原点には、そのような創業の歴史がある。

商品企画部の稲垣慶一部長は言う。

「そうした加工商品を外国人が多い高級ホテルに売りに行ったことがカゴメの最初の一歩になった。昭和8年に発売したトマトジュースも、アメリカに視察に行った社員が現地で売っているのを見て作ったものでした。海外の食文化を日本に翻訳し、定着させる手法はカゴメの伝統でしょう」

また、カゴメの大きな特徴に「契約栽培」という仕組みがある。同社は日本全国に加工用で700軒、生食用で400軒の契約農家を持ち、全国に散らばる「栽培技術グループ」の社員が栽培指導やアドバイスを行っている。これも蟹江一太郎の時代から続く手法で、同社のストレートトマトジュースは全て純国産となっている。生産量の良し悪しにかかわらず契約農家のトマトを全量買い取り、安定した収入を保証することで、トマトの安定的な入手先を確保しているのだ。


「野菜ジュースなどに輸入トマトを使用する一方で、濃縮還元ではないストレートのトマトジュースを契約栽培による純国産で作ることには重要な役割があると思っています」と栽培技術グループの石田信一郎課長は話す。

「トマトと言えばカゴメ――というブランドは、野菜ジュースや生鮮野菜を売っていく上での信頼につながっているはずです。その意味で契約農家の確保は、私たちにとってカゴメというブランドを支える社の根幹にかかわる仕事だという気持ちがあるんです」

現在、カゴメの売り上げの約半分は野菜ジュースの製造販売によって占められている。稲垣が開発したヒット商品「野菜生活」にはトマトが入っていない。だが、寺田社長を筆頭に社員の末端にまで浸透しているのは、それでも社の核には常にトマトに関する事業があるという認識なのだ。

農事業企画部長として生鮮事業を担当する藤井啓吾執行役員は「企業の農業参入が盛んに言われているが、もともと農家だったカゴメは『農家の製造業参入』の会社。その意味で植物工場への進出も自然な成り行きだった」と話した。

もちろん生鮮事業への進出は、そうした歴史的な背景だけでなく、経営上の目算があって具体化されたものだ。「そもそも日本におけるトマトの需要はまだ発展途上にあり、かなり大きな可能性を感じているんです」

藤井啓吾執行役員が現状を語る。


世界のトマト消費量を見ると、平均が年間1人当たり約20キログラムであるのに対して、日本では9キログラムと倍以上の差がある。これは日本ではトマトをサラダとして生で食べることが多いのに対し、海外では煮込み料理の「だし」として使うことが多いためだ。食文化の多様化や西洋化が今後さらに進んでいけば、日本の消費量もいずれは世界平均に近づいていく――それが彼らの基本的な認識である。全国に11カ所ある大型施設での生産を筆頭に、カゴメは年間60万トンの生食トマトの需要のうち1万4000トンを生産しているが、彼は「まずこのシェアを10%にまで高めることを当面の目標としている」と続けた。

「全社で約1930億円ある売り上げのうち、生鮮事業はまだ5%程度の規模に過ぎません。これを8年後までに400億円の規模に引き上げたい。このうち生鮮トマトが270億円。残りはトマト以外の野菜です。すでに他社との資本業務提携も進め、ベビーリーフやニンジンの生産を始めています。ほかの野菜にもカゴメのブランドを拡げていきたいと考えています」

 

 

相対湿度管理

月刊 現代農業2016年11月号 早朝の換気幅を狭めて萎れが激減、収量激増&食味アップ

 

早朝の換気幅を狭めて萎れが激減、収量激増&食味アップ

高知・久保英智

しっかり乾かすのが当たり前!?

 17年前にUターンして、春野町(現高知市)で高糖度トマトの栽培を始めました。当初は15aのハウスでの栽培でしたが、少しずつ規模拡大して現在約1haになりました。

 高糖度トマトといえば、(普通のトマト以上に)かん水量を極限まで抑えて糖度を上げるという栽培方法で、就農当時はそれが当たり前だと思っていました。収量は平均6t/10a程度でしたが、一般的なトマトよりも単価が高いため、それも当たり前だと思っていました。ところがある年に価格が下落。それをきっかけに、糖度を落とさずに、どうにか増収したいと考えるようになりました。

 しかし、いざ収量アップに取り組もうにも、「しっかり換気して水を絞る」というトマト栽培の固定概念がどうしても邪魔をします。そんな時に、ユリ農家の友達がハウスの新しい環境制御技術のことを教えてくれました。友人はすでに手応えを感じていて、以来、二人三脚での試行錯誤が始まりました。5年前のことです。

 

朝からいきなり全開だった

 最初に勧められたのが換気方法の変更です。以前はハウス内をとにかく乾かす(空中湿度を下げておく)ことを基本にしていました。春なら朝、ハウスに行ったら天窓とサイドを全開(秋も半開)。多くのトマト農家がそうだと思いますが、灰色カビ病に神経を尖らせて、朝からとにかく乾燥させないと、病気が蔓延すると決め付けていたのです。これ、トマト農家の「あるある」です。

 今考えると、ハウス内に冷えて乾いた空気が一気に入って、トマトの葉の気孔が閉じていたんだと思います。蒸散できないので吸水もできなかったんでしょう、以前は葉先の萎れもよくありました。

トマトハウス内の温湿度変化
トマトハウス内の温湿度変化
これは3月の管理だが、10月の目標温度推移も同じ。3月と10月は日の出時刻も日平均日射量もほぼ同じため。4月以降、日の出が早くなり日射量が増えたら、換気幅を少し広げて、午前中の急激な温度上昇を防ぐ。

「ちょっと換気」で少しずつ抜く

 その換気方法を改め、温度で換気するというよりも、湿度を気にかけて管理するようにしてみました。朝は日の出ごろに天窓を20%程度開けて、湿度をゆっくり抜いていく(相対湿度を下げる)イメージです。

 換気方法を変えると、以前と比べて日中のハウス内が過ごしやすくなりました。適度な湿度が保たれて、トマトの気孔が開いて蒸散量が増え、気化熱で周りの温度が下がるのでしょう。換気幅を小さくしたら暑くなると想像していたのに、まったく逆の現象でした。

 ただし、春先以降は日射量が多くなり、午前中の温度上昇率がどうしても高くなります。湿度にこだわり過ぎると温度が急上昇して失敗するので、秋に比べて朝の換気幅を少し広げています。

 

積極かん水が必要になる

 トマトの蒸散量が増えたせいか、今度はそれまでの少ないかん水量がどうしてもネックになり始めました。地上部をうまく管理すればするほど、蒸散量が増えて、かん水量を増やさないと生長点や果実に水分が足りなくなってしまうようなのです。

 そこで、徐々にかん水量を増やしていきました。今では、当初の4倍以上のかん水量になっています。養液土耕システムで、かん水と施肥を自動化していたので、施用量を把握しながら増やすことができました。

 おかげで葉先の萎れもだいぶ減って、春先では遮光回数も減りました。水と一緒にカルシウムが運ばれるせいか、尻腐れ果などの障害も減りました。

収量1.5倍で美味しくなった

 その結果、トマトの収量は約1.5倍の10t以上になりました。かん水量を増やしたことで下がると心配していた糖度はというと、糖度八度を超える割合は以前と比べてむしろ増えました。また、以前の酸が少し強い食味から、糖酸度のバランスのよい旨味の増したトマトができるようになりました。じつは私、あまりトマトが好きでなかったのですが、そんな自分でも食べられる味になりました。

 換気方法を変えたおかげで光合成産物が増えて、トマトが以前よりも養分を蓄えることができるようになったためだと思います。また、かん水量を増やしても果実が水っぽくならないのは、蒸散や光合成にそうとう使い切るためだと思います。

お金をかけずにここまでやれる

 環境制御の勉強を本格的に始める前に、ほとんどお金をかけずにここまでできました。その後、プロファインダー(156ページ)を導入し、ハウス内の環境変化を本格的に見える化しました。それによって、固定概念に縛られた、感覚的な以前の管理がいろいろ間違っていたことが、よく理解できました。また、温度の上がり方など、わが家のハウスそれぞれの特性を理解しながら管理できるようにもなりました。全体的に品質が改善し、販売面で有利になったと思います。

 さらに去年から、炭酸ガス施用(生ガス施用)にも挑戦中です。光合成量が増えて、収量も品質ももっと向上すると期待しているところです。

 

 最近は各産地で環境制御の勉強会も増えて、いろいろな取り組みが始まっていますが、理屈がわかれば、それほどお金をかけなくていいと思います。大切なのは、作物を毎日観察することと、今までの固定概念を払拭する勇気です。

 自分自身も最初は、換気方法を変えるだけでそこまで変化があるとは信じられないまま、まずは一棟のハウスで取り組み始めたのを覚えています。友達のいうとおり、ダメもとでやってみたらトマトの樹姿のあまりの変化に驚いて、それ以来、従来の管理を少しずつ見直してきました。

 これからも、経験値を上げて、多角的に物事を見られるように、頑張っていきたいと思います。

アイメック

TEDxTokyo - 森有一博士 - Soil-free Agriculture

製品情報: アイメック® | アイメック®(フイルム農法)― 高糖度フルーツトマトに代表される高栄養価野菜を生産する栽培法― メビオール株式会社

 

 アイメック農法

 

導入費用(初期投資)
600坪で1100~1200万円

ランニングコスト
年間200~240万円

特許ライセンス料含む

 

1畝 = 30坪 = 約99.174平米 = 約1アール(a)

1町 = 10反 = 約9917.4平米 = 約1ヘクタール(ha)

1反=300坪

1反あたり500万から600万あたり

 

http://www.waso-farm.com/user_data/packages/default/img/page/waso_farm_guide.pdf

http://www.sankyo3.com/Imec.pdf

従来の養液土耕栽培、水耕栽培では作物を 高品質化(たとえば高糖度化)するためには 養液の塩濃度(たとえば肥料濃度、食塩 濃度など)を高める塩分ストレス法が用いら れてきました。しかしながら高塩障害による 生産性の低下が避けられませんでした。 即ち、これまでの農業技術では生産性と 品質の両立は困難でした。

一方、アイメックでは、“ハイドロメンブラン”中 の水は親水性高分子に吸着していて作物は 摂取しにくい、即ち、純粋な水分ストレスによ る高品質化が起こります。従って、高塩障害 は発生しません。更に、 “ハイドロメンブレン” 上方から供給される養液が効率的に生産性 を高めます。アイメックでは従来技術では困難であった高品質化と高生産性の両立が可能になりました。